【シネマ雑学常識】実話をもとにした映画②アメリカン·スナイパー

殺さなければ私が、あるいは私の戦友が死ぬ。 戦争の基本概念だ。 生きるために敵を打ち破ったとはいえ、良心の呵責を感じざるを得ない。 にもかかわらず、軍人は戦友と祖国を守るために進む。 米国とイラクの戦争を扱った<アメリカン·スナイパー>は数多くの軍人が死んで負傷したその阿鼻叫喚の真ん中で同僚と自身を守ろうとする伝説的な米国の狙撃手、「クリス·カイル」(ブラッドリー·クーパー)の話だ。 <サリー:ハドソン川の奇跡>、<父の旗>の演出を担当した有名監督クリント·イーストウッドがメガホンを取った<アメリカン·スナイパー>は米軍の戦争英雄を称える映画のようだが、実状はそうではない。 残酷な戦争で疲弊した「人間」クリス·カイルに焦点を合わせる。 9·11テロの残酷さを目撃し、自らネイビーシール隊員になってイラクに派兵したクリス·カイル。 非公式記録で255人の敵軍を射殺した彼だったが、続く戦闘で救えない戦友ができ、それによって派兵期間中ずっと苦しんでいる。 戦友たちの復讐のためなら無理な作戦も厭わないが、絶えず同僚たちが傷害を負うのを見てPTSDが発生してしまう。 結局、専門的に訓練を受けた彼さえも戦争の波に流されてしまったのだ。 クリス·カイルの苦悩を最大限に引き出すのは、2時間続く緊張感だ。 イーストウッド監督はこのため、音響効果は最小限に抑え、突然の戦闘開始場面を数ヵ所配置して戦場の姿を最大限再現した。 派兵と派兵の間に平和な日常を送るカイルがますます暴力的な姿と鋭敏さを表わす部分も緊張感を極大化した。 いつもどんなことが起こるか分からず緊張していた観客は、映画が終わって初めて緊張をほぐすことができた。 狙撃手と関連した映画は、特有の緊張感と主人公の狙撃の腕前に感嘆しながら見やすい映画だ。 苦難と逆境を迎えるが、主人公は勝利し、素敵な姿だけを見せてくれる映画がほとんどだ。 しかし、<アメリカン·スナイパー>は怪物になっていく主人公を照明しながら、戦争が個人に及ぼす否定的な影響を話したかったようだ。 やはり一番いいのは戦争英雄が誕生しないことではないか。

アメリカン·スナイパー(2015)-監督:クリントン·イーストウッドⅠクリス·カイル(ブラッドリー·クーパー)Ⅰタヤ(シエナ·ミラー)

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